彩桐の日記兼・SSリハビリ・鍛錬場です。
戦国・BASARA家・十勇士・女体化・幼少期入り乱れになると思いますので、ご注意下さいませ。
感想・コメント等御座いましたら、お気軽にどうぞv
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「ぎぃやぁぁぁぁああああ」
あるよく晴れた日の昼下がり、上田城に男の悲鳴が響き渡る。
「あ?何事だ?」
「今の、十兄の声じゃない?」
「尋常じゃねぇな。行くか?」
「うん。」
「尋常じゃない」と言いつつ、のんびりとした調子で声のした方へ向かう小六と小助。
一方、その絶叫を上げた男は庭の隅で肩を押さえうずくまっていた。
その傍らには女が一人、何故か仁王立ちで立っていた。
「やぁねぇ、十蔵。たかが肩外れた位で情けない。」
「あれ、お前がそんなこと言う?
肩外した張本人が…元親さんにまた一発で見抜かれてムカついて八つ当たりに
体当たりかましてぶっ飛ばして足りないからもう一発殴らせろと
勢い良く引っ張り上げて肩外したお前が言うか!?」
「わぁ十兄、ノンブレス。」
「つーかまだやってんのか甚八。」
「あら、小助に小六。」
うっすら涙まで浮かべ、ノンブレスで抗議する十蔵に対し、
甚八は全く悪びれる様子は見られない。むしろ不満そうですらある。
「まぁまぁ十兄。文句はひとまず、肩を治そうよ。」
そう小助が言った瞬間止まった。
皆が止まった。
むしろ凍り付いた。
「あ、いや、小助、俺は大丈夫!
これくらい自分で戻せるから…!!」
「あ、わ、私のせいだし、私がやるわ!!」
皆が不自然なまでにどもり出す。
体の動きもどこかおかしい。
「え、俺がやるよ?」
「ダメだ小助お前はダメだ!!」
十蔵の特技はどうやらノンブレスのまくし立てらしい。
日々の甚八への愛の告白と言う名のツッコミの賜物であろう。
中々に泣かせる特技である。
「小助、確かにお前は薬の知識が豊富で、真田隊の医師みたいなものだ。
だけど、お前には致命的な欠点がある。」
「こ、小六…」
静かに語り出した小六を甚八は止めようとした。
しかし、それは一瞥の下、拒否された。
そして小六は小助を真正面に見据えていた視線を一度外し、
静かに息を整えた。
そして…
「お前は薬の調合、切り傷の手当以外において、破滅的に不器用なんだよ。」
「!!!」
言ってしまった。今まで誰も言わなかった…
否、言えずにいたことを小六は言ってしまった。
しかし、他の二人は胸の内では「良く言った小六!!」と拍手喝采していた。
それほどまでに小助は不器用なのか。
正確に言うと、小助はそれほど不器用な訳けではない。
ただ、「外れた関節を戻す」ことが出来ないのであった。
以前、主である幸村が戦中にやはり肩の関節を外した事があった。
その時、小助が戻そうとしたのだが、
どうすればそんな事が出来るのか、肩の骨をはめるを通り越し、
突き破り肩から骨を飛び出させたのだ。
それにより幸村は、一日で治る怪我を盛大に一ヶ月引き延ばしたのである。
幸村は、「誰にでも失敗はある、気にするな」と笑っていたが、
周囲の間では「小助に脱臼は触らせるな」という触れが回った。
「小六兄…」
「だがな、練習すればきっと上手くなるぞ。」
「「!!?」」
小六の極上の笑顔とその台詞に、十蔵と甚八は再び凍り付いた。
「ちょ、待て小す……
っぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
この日、十蔵の絶叫は北は奥州、南は河内まで響き渡ったという。
※※※※※※※※※※※※
ただ単に可哀相な十蔵が書きたかっただけです。
ピンポイントで不器用な小助。
ドMなくせにドSな小六。
微妙な影の薄さの甚八。
彩桐忍
あるよく晴れた日の昼下がり、上田城に男の悲鳴が響き渡る。
「あ?何事だ?」
「今の、十兄の声じゃない?」
「尋常じゃねぇな。行くか?」
「うん。」
「尋常じゃない」と言いつつ、のんびりとした調子で声のした方へ向かう小六と小助。
一方、その絶叫を上げた男は庭の隅で肩を押さえうずくまっていた。
その傍らには女が一人、何故か仁王立ちで立っていた。
「やぁねぇ、十蔵。たかが肩外れた位で情けない。」
「あれ、お前がそんなこと言う?
肩外した張本人が…元親さんにまた一発で見抜かれてムカついて八つ当たりに
体当たりかましてぶっ飛ばして足りないからもう一発殴らせろと
勢い良く引っ張り上げて肩外したお前が言うか!?」
「わぁ十兄、ノンブレス。」
「つーかまだやってんのか甚八。」
「あら、小助に小六。」
うっすら涙まで浮かべ、ノンブレスで抗議する十蔵に対し、
甚八は全く悪びれる様子は見られない。むしろ不満そうですらある。
「まぁまぁ十兄。文句はひとまず、肩を治そうよ。」
そう小助が言った瞬間止まった。
皆が止まった。
むしろ凍り付いた。
「あ、いや、小助、俺は大丈夫!
これくらい自分で戻せるから…!!」
「あ、わ、私のせいだし、私がやるわ!!」
皆が不自然なまでにどもり出す。
体の動きもどこかおかしい。
「え、俺がやるよ?」
「ダメだ小助お前はダメだ!!」
十蔵の特技はどうやらノンブレスのまくし立てらしい。
日々の甚八への愛の告白と言う名のツッコミの賜物であろう。
中々に泣かせる特技である。
「小助、確かにお前は薬の知識が豊富で、真田隊の医師みたいなものだ。
だけど、お前には致命的な欠点がある。」
「こ、小六…」
静かに語り出した小六を甚八は止めようとした。
しかし、それは一瞥の下、拒否された。
そして小六は小助を真正面に見据えていた視線を一度外し、
静かに息を整えた。
そして…
「お前は薬の調合、切り傷の手当以外において、破滅的に不器用なんだよ。」
「!!!」
言ってしまった。今まで誰も言わなかった…
否、言えずにいたことを小六は言ってしまった。
しかし、他の二人は胸の内では「良く言った小六!!」と拍手喝采していた。
それほどまでに小助は不器用なのか。
正確に言うと、小助はそれほど不器用な訳けではない。
ただ、「外れた関節を戻す」ことが出来ないのであった。
以前、主である幸村が戦中にやはり肩の関節を外した事があった。
その時、小助が戻そうとしたのだが、
どうすればそんな事が出来るのか、肩の骨をはめるを通り越し、
突き破り肩から骨を飛び出させたのだ。
それにより幸村は、一日で治る怪我を盛大に一ヶ月引き延ばしたのである。
幸村は、「誰にでも失敗はある、気にするな」と笑っていたが、
周囲の間では「小助に脱臼は触らせるな」という触れが回った。
「小六兄…」
「だがな、練習すればきっと上手くなるぞ。」
「「!!?」」
小六の極上の笑顔とその台詞に、十蔵と甚八は再び凍り付いた。
「ちょ、待て小す……
っぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
この日、十蔵の絶叫は北は奥州、南は河内まで響き渡ったという。
※※※※※※※※※※※※
ただ単に可哀相な十蔵が書きたかっただけです。
ピンポイントで不器用な小助。
ドMなくせにドSな小六。
微妙な影の薄さの甚八。
彩桐忍
「Goddamn!なんだってンな目に遭わなきゃなんねぇんだ…!!」
盛大に文句を言いながらも、青い陣羽織を纏った青年が鋭い剣撃を繰り出す。
「自業自得かと思われますが…政宗殿、右!!」
その青い青年に対し、全てが真逆と言わんばかりに
紅い具足を纏い、冷静に応答しつつ、槍を振り下ろしたのは、
未だ少年の面影を遺す青年だった。
「っだぁぁあ、もう、ウゼェんだよJET-X!!」
青い陣羽織の青年…奥州筆頭・伊達政宗はキレ始めたのか、
繰り出す技が大技になってきている。
「…はぁ。仕方ない、か。余り騒ぎにしたくなかったのだが…紅蓮脚!!」
紅い具足を身につけた青年…真田幸村は触発される様に大技を繰り出した。
「それにしたって何でコイツ等、んな殺気立ってんだぁ?」
「政宗殿、それは本気で申し上げておるのか。」
どうやら本気らしい政宗に、思わず呆れた溜め息をつく幸村。
「言わせて頂くが、ここは奥州との国境とは言え、甲斐の国。
そんな所に奥州王が一人でフラフラしている事自体が危なっかしいのに、
かち合ったならず者に喧嘩腰になればどうなるか、
貴方ならすぐに分かったで御座ろう!?」
そう一気にまくし立てる幸村に政宗は珍しくたじろいだ。
何せ幸村の言っていることは真っ当で、言い返す言葉がないのだ。
「小十郎みてぇなこと言うなよ…。」
「これを言わずして何を申し上げろと?」
「お前、笑顔怖い。」
そう続く幸村の説教の間も二人の手は止まらない。
倒しては沸く、ならず者集団に政宗は早くも飽き始めた。
「あー、もー面倒臭ぇっ!!まとめて来いよっ!!」
「貴方の首を狙ってるんだ、無理で御座ろう。」
「お前、さっきから嫌に冷静だな。
コイツ等に用でもあるのか?」
「そういう所はしっかり考えているので御座るな。」
「嫌味か。」
「さぁどうでしょう。まぁ、確かに用はあります。」
二人は互いに背中を庇い合うように立っている。
政宗は相手の生死など考えずに攻撃していたが、
どうやら幸村は違っていたらしい。
極力、相手を死なせない程度、動きを封じる様に
手足を攻撃の中心としていた。
「ここらの地域はつい先日制圧したばかりでしてな。
まだ『整えばならぬ事』が山ほどありまして。」
「Ha~n、成る程。それでお前、俺を利用したか。」
「はてさて、何の事やら。」
「ふざけんなよ。お前が指定した待ち合わせ場所、
俺が最短で行くためには『此処』を通らなきゃならねぇ。
全てを見越した上で指定した。違うか?」
「政宗殿には敵いませぬなぁ。」
「お前の腹黒い策に比べりゃ大した事ねぇだろ。」
「お褒めに与り恐悦至極。」
「褒めてねぇよ。」
そんな会話をする余裕を見せ付けつつ、
確実に数を減らしていく。
流石は独眼竜と虎の若子と称される二人である。
「まぁ、そういう訳だ。
悪いが『独眼竜』、もう少し我が『舞』に付き合って頂くぞ。」
「……Ha、言うねぇ。
これ以上つまんねぇ展開だったら承知しねぇぞ!」
「案ずるなかれ。これからが見せ場に御座る。」
「そいつは楽しみだ。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※
レッツ尻切れ!!
幸村に「悪いが、もう少し我が舞に付き合ってもらう」
ってのを言わせたいが為だけに書いたので…
周囲の状況なんかはご想像にお任せする、という方向で(最低)
多分山道かなんかです、ハイ。
彩桐忍
盛大に文句を言いながらも、青い陣羽織を纏った青年が鋭い剣撃を繰り出す。
「自業自得かと思われますが…政宗殿、右!!」
その青い青年に対し、全てが真逆と言わんばかりに
紅い具足を纏い、冷静に応答しつつ、槍を振り下ろしたのは、
未だ少年の面影を遺す青年だった。
「っだぁぁあ、もう、ウゼェんだよJET-X!!」
青い陣羽織の青年…奥州筆頭・伊達政宗はキレ始めたのか、
繰り出す技が大技になってきている。
「…はぁ。仕方ない、か。余り騒ぎにしたくなかったのだが…紅蓮脚!!」
紅い具足を身につけた青年…真田幸村は触発される様に大技を繰り出した。
「それにしたって何でコイツ等、んな殺気立ってんだぁ?」
「政宗殿、それは本気で申し上げておるのか。」
どうやら本気らしい政宗に、思わず呆れた溜め息をつく幸村。
「言わせて頂くが、ここは奥州との国境とは言え、甲斐の国。
そんな所に奥州王が一人でフラフラしている事自体が危なっかしいのに、
かち合ったならず者に喧嘩腰になればどうなるか、
貴方ならすぐに分かったで御座ろう!?」
そう一気にまくし立てる幸村に政宗は珍しくたじろいだ。
何せ幸村の言っていることは真っ当で、言い返す言葉がないのだ。
「小十郎みてぇなこと言うなよ…。」
「これを言わずして何を申し上げろと?」
「お前、笑顔怖い。」
そう続く幸村の説教の間も二人の手は止まらない。
倒しては沸く、ならず者集団に政宗は早くも飽き始めた。
「あー、もー面倒臭ぇっ!!まとめて来いよっ!!」
「貴方の首を狙ってるんだ、無理で御座ろう。」
「お前、さっきから嫌に冷静だな。
コイツ等に用でもあるのか?」
「そういう所はしっかり考えているので御座るな。」
「嫌味か。」
「さぁどうでしょう。まぁ、確かに用はあります。」
二人は互いに背中を庇い合うように立っている。
政宗は相手の生死など考えずに攻撃していたが、
どうやら幸村は違っていたらしい。
極力、相手を死なせない程度、動きを封じる様に
手足を攻撃の中心としていた。
「ここらの地域はつい先日制圧したばかりでしてな。
まだ『整えばならぬ事』が山ほどありまして。」
「Ha~n、成る程。それでお前、俺を利用したか。」
「はてさて、何の事やら。」
「ふざけんなよ。お前が指定した待ち合わせ場所、
俺が最短で行くためには『此処』を通らなきゃならねぇ。
全てを見越した上で指定した。違うか?」
「政宗殿には敵いませぬなぁ。」
「お前の腹黒い策に比べりゃ大した事ねぇだろ。」
「お褒めに与り恐悦至極。」
「褒めてねぇよ。」
そんな会話をする余裕を見せ付けつつ、
確実に数を減らしていく。
流石は独眼竜と虎の若子と称される二人である。
「まぁ、そういう訳だ。
悪いが『独眼竜』、もう少し我が『舞』に付き合って頂くぞ。」
「……Ha、言うねぇ。
これ以上つまんねぇ展開だったら承知しねぇぞ!」
「案ずるなかれ。これからが見せ場に御座る。」
「そいつは楽しみだ。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※
レッツ尻切れ!!
幸村に「悪いが、もう少し我が舞に付き合ってもらう」
ってのを言わせたいが為だけに書いたので…
周囲の状況なんかはご想像にお任せする、という方向で(最低)
多分山道かなんかです、ハイ。
彩桐忍
ほろ ほろ
ほろ ほろ ほろ
舌で転がす酒は甘辛く。
肴は貴女と天上の月。
たったそれだけなのに、この上ない贅沢感。
クスクスと小鈴を鳴らしたような笑い声。
ふと見上げれば貴女の顔。
嗚呼、やはり自分は贅沢者だ。
こんな気高く美しい独眼竜を独占し酒を飲めるのだから。
「如何なされました、政宗殿。」
「Ah―,sorry.邪魔したか。」
彼女を引き寄せ、左肩に寄り掛からせる。
不思議そうにしつつも抵抗はされない。
「で、何を笑っておられたのです?」
「あぁ、いや、いつ見ても慣れねぇなぁと思って。」
「え?」
「お前が酒飲む姿。何か違和感。」
「そう、ですか?」
「Yeah,甘酒ならまだ分かるがな。焼酎だもんなぁ。」
彼女は俺が飲んでいた杯を奪い、焼酎を一口含む。
彼女には辛過ぎたのか、眉をひそめた。
そんな表情すら愛しい。
「某は、幸せ者です。」
「は?」
「愛しい方を腕に抱きながら酒を飲めるなど、
至上の贅沢というもの…。」
そう耳元で囁けば、くすぐったそうに身を攀られる。
気にせず首筋に顔を埋める。
嗚呼、なんと儚くも甘美な匂いか。
ほろ ほろ
ほろ ほろ ほろ
独眼竜の色香に酔いしれる
ほろ ほろ ほろ
舌で転がす酒は甘辛く。
肴は貴女と天上の月。
たったそれだけなのに、この上ない贅沢感。
クスクスと小鈴を鳴らしたような笑い声。
ふと見上げれば貴女の顔。
嗚呼、やはり自分は贅沢者だ。
こんな気高く美しい独眼竜を独占し酒を飲めるのだから。
「如何なされました、政宗殿。」
「Ah―,sorry.邪魔したか。」
彼女を引き寄せ、左肩に寄り掛からせる。
不思議そうにしつつも抵抗はされない。
「で、何を笑っておられたのです?」
「あぁ、いや、いつ見ても慣れねぇなぁと思って。」
「え?」
「お前が酒飲む姿。何か違和感。」
「そう、ですか?」
「Yeah,甘酒ならまだ分かるがな。焼酎だもんなぁ。」
彼女は俺が飲んでいた杯を奪い、焼酎を一口含む。
彼女には辛過ぎたのか、眉をひそめた。
そんな表情すら愛しい。
「某は、幸せ者です。」
「は?」
「愛しい方を腕に抱きながら酒を飲めるなど、
至上の贅沢というもの…。」
そう耳元で囁けば、くすぐったそうに身を攀られる。
気にせず首筋に顔を埋める。
嗚呼、なんと儚くも甘美な匂いか。
ほろ ほろ
ほろ ほろ ほろ
独眼竜の色香に酔いしれる
奥州筆頭、伊達政宗が女であるという事を知る者は少ない。
甲斐の虎若子、真田幸村はそんな政宗の正体を知る、数少ない人間の一人であった。
そしてそんな二人が想いを通わせている者同士であるという事を知っている人間は更に数少ない。
政宗の親友であり、良き兄貴分である四国の鬼、長曾我部元親と
幸村の部下でありながら姉、というよりは母の様な存在の猿飛佐助くらいである。
そんな実は女である伊達政宗は落ち込んでいた。
というのも…
「半年、幸村に会ってない…。」
からであった。
奥州筆頭である彼女は戦がなくても多忙を極める身である。
奥州と甲斐、遠く離れた地に身を置く二人が想いを通わせる事が出来ているのは、
一重に政宗より自由度が高い幸村の行動力の賜物と言っても過言ではなかった。
それ故、幸村が来ない以上、二人が会う事は不可能に近い。
「やっぱり俺、幸村に甘えてたんだなぁ…。情けねぇー…。」
書簡へ走らせていた筆を止め、政宗は深いため息を付き天井を仰いだ…
「あらやだ姫さん、なぁに?旦那に会えないのがそんなに寂しい?」
眼前に広がる笑顔。
ひどく中性的な顔だが、よく見ればそれが女である事は容易に知れた。
その女は政宗が仰いだ天井からぶら下がる様にして現れ、
音もなく政宗の横に降り立った。
「んなっ!?さ、佐助!?」
「お久しぶり~!あ、始めはちゃんと門から入ったよ!
驚かせようと思ってね~。」
あはは、と明るく笑う女忍・猿飛佐助に対し、
政宗は脱力しきったのち、はた、と気付いた。
「お前、何しに来たんだ?」
「ん~?これを姫さんに渡しにね~。
旦那いま忙しくってねー。代わりに俺様がってね。」
「そう…忙しいのか。」
政宗より身分は低いと言えど、幸村も武将である。
しかも甲斐の虎から全幅の信頼を寄せられている。
何かと忙しいのは想像に難くない。
それでも落胆する気持ちは隠しきれなかった。
「んもぅ!そんな暗い顔してたら折角の可愛い顔が台なし!
笑って笑って!!」
落胆に表情を曇らせる政宗の顔を優しく包む様に
佐助は両手を添え、ニッコリと笑う。
それから、自信の傍に置かれた風呂敷包みを政宗の前に差し出した。
「コレ、旦那から姫さんに。
あの人あぁ見えて結構、見る目あるんだよねぇ。
気に入って貰えるといいんだけど…って姫さんなら持ってるかも知れないねぇ。」
後半は一人ごちる調子だったが、政宗は気にせず「幸村からの贈り物」に手を伸ばす。
心なしか緊張しているのが分かる。
それでもゆっくりと包みを解いていく。
「これは…」
中から出てきたのは小袖だった。
地の色は藤。しかし全体にグラデーションが掛かっており、
肩口から裾に掛けて薄紅、藤、青藤と変化している。
そして、左肩から流れるように藤の花が咲き乱れ、
裾には桜の花がちりばめられていた。
さながら春を体言した見事なものである。
「これを、アイツが…?」
「ちょっと意外でしょ?俺も始めはビックリしたもん。」
呆気に取られている政宗に佐助は苦笑を漏らす。
「ね、着てみてくれません?」
「い、今?」
「うん。駄目かな?
似合うかどうか確かめて来いとも言われてるんだよね~。」
暫く小袖を見つめていた政宗だったが、
意を決した様に佐助を見据え、
「着替えてくる。少し待ってろ。」
そう言い残し、部屋を後にした。
「さて、その間に…と。」
佐助もまた部屋から姿を消し、
数分何事もなかった様に部屋の下座に鎮座した。
「姫さん?」
先程政宗が出ていった襖の外から気配を感じた佐助はそちらに笑顔を向ける。
返事の代わりに静かに襖が開き、奥から先の小袖を纏った政宗が出て来た。
色の白い政宗に衿回りの薄紅は綺麗に映え、
普段から青を好んで身につけているため、裾の青藤も違和感がない。
そして、髪も左側を編み上げにし、藤の簪を挿している。
「良かったぁ~、すっごく似合ってるよぉ!!」
「そ、そうか…?」
「ね、旦那?」
「は?」
「あぁ、やはり我が目に狂いはなかったようだ。」
政宗が入ってきた襖とは反対の襖が静かに開く。
そしてそこに現れたのは逢いたくて逢いたくて仕方なかった男。
甲斐の虎若子、紅蓮の二槍使い・真田幸村。
「な、お、お前、なんで…?」
忙しいのではなかったのか?
だから佐助が来たのではなかったのか?
混乱する頭を無理矢理押さえ込み、それだけを何とか口にする。
「政宗殿ほどでは御座いませぬよ。」
幸村は人当たりの良い柔らかい笑顔で応える。
改めて幸村の声を聞き、気が抜けたのか、政宗はその場にへたり込んでしまった。
「姫さん!?」
「政宗殿!!」
すかさず幸村が政宗を支えに走る。
それを見届け、佐助は苦笑を一つだけ漏らし、音も無く消えた。
「馬鹿…幸村の馬鹿!!阿呆!!」
「政宗殿…?」
背を支える様に回されていた幸村の左手を右手で掴み、
空いた左手で幸村の右胸を何度も殴る。
幸村は特に抵抗せず、政宗のやりたいようにやらせていた。
暫くすると気が済んだのか、左手の動きは止まり、
怖ず怖ずと幸村の胸元を握り締めた。
その様子に安堵した幸村は優しく、だが強く政宗を抱きしめる。
「申し訳ありませんでした。
本当はもう少し早く、と思っておったのですが、
先にありました戦で少々怪我をしてしまい…」
「え…?」
数ヶ月前まで武田は今川平定を目指し、今川と戦をしていた。
その時、今川は得意とする影武者戦を仕掛けてきた。
その影武者の数にブチ切れた幸村は佐助から
禁止令が出されている筈の大噴火を装備し出陣した。
佐助が禁止するのにはそれなりの理由がある。
大噴火は攻撃力が大幅に上がる分、
自分が喰らうダメージも大幅に上がる両刃の剣のアイテムである。
そして幸村の基本思考は「攻撃は最大の防御」である。
つまり防御らしい防御をしない。
それで大噴火を装備すればどうなるか…容易に想像できるだろう。
案の定、幸村はボロボロになって帰って来た。
全身傷だらけだったのだが、中でも治癒に時間が掛かったのが右肩の骨折だった。
「政宗殿に逢いに行く」 と言っては部屋から抜け出そうとする幸村を
十勇士の連携プレーで抑えていたのだと後に佐助が遠い目をしながら教えてくれた。
「…とまぁ、この様な理由で中々来る事ができませんでした。
全ては某が未熟故の事。赦せとは言いませぬ。」
「何故、文一つ寄越さなかった。」
「右肩をやられておりました故。
代筆も考えましたが、その様な真似をすれば勘の良い政宗殿の事、
気付かれいらぬ心配をさせては、と思い…」
確かにその通りだった。
「報せがないのは無事の証拠」
もし下手に代筆を立てた文など寄越されていたら、
自分の立場を忘れ、何もかもを放り出し甲斐に行っていたかも知れない。
そんな事を全て見越しての幸村なりの気遣いだった。
「Sorry...そう、だよな。お前は間違っちゃいねぇよ。」
「政宗殿…?」
「逢いたかった…」
「はい。逢いとう御座いました。」
部屋の中の影がゆっくりと一つに溶け合うのを
部屋を監視出来る巨木の上から見届けた佐助は大きなため息一つ付いて
「さっさと祝言あげればいいのに。」
と呟き、黒翼一枚残し消え去った。
※※※※※※※※※※※※
幸村がセンス良かったらいいなって話。
暑苦しいのは戦場とお館様の前だけだと思う。
そして私はニョダテを何処まで乙女にしたいのか。
幸村が藤の柄の小袖を贈ったのにはちゃんと理由がありますが、
まぁその辺は読んだ方の感性にお任せ致します(逃げた)
彩桐忍
甲斐の虎若子、真田幸村はそんな政宗の正体を知る、数少ない人間の一人であった。
そしてそんな二人が想いを通わせている者同士であるという事を知っている人間は更に数少ない。
政宗の親友であり、良き兄貴分である四国の鬼、長曾我部元親と
幸村の部下でありながら姉、というよりは母の様な存在の猿飛佐助くらいである。
そんな実は女である伊達政宗は落ち込んでいた。
というのも…
「半年、幸村に会ってない…。」
からであった。
奥州筆頭である彼女は戦がなくても多忙を極める身である。
奥州と甲斐、遠く離れた地に身を置く二人が想いを通わせる事が出来ているのは、
一重に政宗より自由度が高い幸村の行動力の賜物と言っても過言ではなかった。
それ故、幸村が来ない以上、二人が会う事は不可能に近い。
「やっぱり俺、幸村に甘えてたんだなぁ…。情けねぇー…。」
書簡へ走らせていた筆を止め、政宗は深いため息を付き天井を仰いだ…
「あらやだ姫さん、なぁに?旦那に会えないのがそんなに寂しい?」
眼前に広がる笑顔。
ひどく中性的な顔だが、よく見ればそれが女である事は容易に知れた。
その女は政宗が仰いだ天井からぶら下がる様にして現れ、
音もなく政宗の横に降り立った。
「んなっ!?さ、佐助!?」
「お久しぶり~!あ、始めはちゃんと門から入ったよ!
驚かせようと思ってね~。」
あはは、と明るく笑う女忍・猿飛佐助に対し、
政宗は脱力しきったのち、はた、と気付いた。
「お前、何しに来たんだ?」
「ん~?これを姫さんに渡しにね~。
旦那いま忙しくってねー。代わりに俺様がってね。」
「そう…忙しいのか。」
政宗より身分は低いと言えど、幸村も武将である。
しかも甲斐の虎から全幅の信頼を寄せられている。
何かと忙しいのは想像に難くない。
それでも落胆する気持ちは隠しきれなかった。
「んもぅ!そんな暗い顔してたら折角の可愛い顔が台なし!
笑って笑って!!」
落胆に表情を曇らせる政宗の顔を優しく包む様に
佐助は両手を添え、ニッコリと笑う。
それから、自信の傍に置かれた風呂敷包みを政宗の前に差し出した。
「コレ、旦那から姫さんに。
あの人あぁ見えて結構、見る目あるんだよねぇ。
気に入って貰えるといいんだけど…って姫さんなら持ってるかも知れないねぇ。」
後半は一人ごちる調子だったが、政宗は気にせず「幸村からの贈り物」に手を伸ばす。
心なしか緊張しているのが分かる。
それでもゆっくりと包みを解いていく。
「これは…」
中から出てきたのは小袖だった。
地の色は藤。しかし全体にグラデーションが掛かっており、
肩口から裾に掛けて薄紅、藤、青藤と変化している。
そして、左肩から流れるように藤の花が咲き乱れ、
裾には桜の花がちりばめられていた。
さながら春を体言した見事なものである。
「これを、アイツが…?」
「ちょっと意外でしょ?俺も始めはビックリしたもん。」
呆気に取られている政宗に佐助は苦笑を漏らす。
「ね、着てみてくれません?」
「い、今?」
「うん。駄目かな?
似合うかどうか確かめて来いとも言われてるんだよね~。」
暫く小袖を見つめていた政宗だったが、
意を決した様に佐助を見据え、
「着替えてくる。少し待ってろ。」
そう言い残し、部屋を後にした。
「さて、その間に…と。」
佐助もまた部屋から姿を消し、
数分何事もなかった様に部屋の下座に鎮座した。
「姫さん?」
先程政宗が出ていった襖の外から気配を感じた佐助はそちらに笑顔を向ける。
返事の代わりに静かに襖が開き、奥から先の小袖を纏った政宗が出て来た。
色の白い政宗に衿回りの薄紅は綺麗に映え、
普段から青を好んで身につけているため、裾の青藤も違和感がない。
そして、髪も左側を編み上げにし、藤の簪を挿している。
「良かったぁ~、すっごく似合ってるよぉ!!」
「そ、そうか…?」
「ね、旦那?」
「は?」
「あぁ、やはり我が目に狂いはなかったようだ。」
政宗が入ってきた襖とは反対の襖が静かに開く。
そしてそこに現れたのは逢いたくて逢いたくて仕方なかった男。
甲斐の虎若子、紅蓮の二槍使い・真田幸村。
「な、お、お前、なんで…?」
忙しいのではなかったのか?
だから佐助が来たのではなかったのか?
混乱する頭を無理矢理押さえ込み、それだけを何とか口にする。
「政宗殿ほどでは御座いませぬよ。」
幸村は人当たりの良い柔らかい笑顔で応える。
改めて幸村の声を聞き、気が抜けたのか、政宗はその場にへたり込んでしまった。
「姫さん!?」
「政宗殿!!」
すかさず幸村が政宗を支えに走る。
それを見届け、佐助は苦笑を一つだけ漏らし、音も無く消えた。
「馬鹿…幸村の馬鹿!!阿呆!!」
「政宗殿…?」
背を支える様に回されていた幸村の左手を右手で掴み、
空いた左手で幸村の右胸を何度も殴る。
幸村は特に抵抗せず、政宗のやりたいようにやらせていた。
暫くすると気が済んだのか、左手の動きは止まり、
怖ず怖ずと幸村の胸元を握り締めた。
その様子に安堵した幸村は優しく、だが強く政宗を抱きしめる。
「申し訳ありませんでした。
本当はもう少し早く、と思っておったのですが、
先にありました戦で少々怪我をしてしまい…」
「え…?」
数ヶ月前まで武田は今川平定を目指し、今川と戦をしていた。
その時、今川は得意とする影武者戦を仕掛けてきた。
その影武者の数にブチ切れた幸村は佐助から
禁止令が出されている筈の大噴火を装備し出陣した。
佐助が禁止するのにはそれなりの理由がある。
大噴火は攻撃力が大幅に上がる分、
自分が喰らうダメージも大幅に上がる両刃の剣のアイテムである。
そして幸村の基本思考は「攻撃は最大の防御」である。
つまり防御らしい防御をしない。
それで大噴火を装備すればどうなるか…容易に想像できるだろう。
案の定、幸村はボロボロになって帰って来た。
全身傷だらけだったのだが、中でも治癒に時間が掛かったのが右肩の骨折だった。
「政宗殿に逢いに行く」 と言っては部屋から抜け出そうとする幸村を
十勇士の連携プレーで抑えていたのだと後に佐助が遠い目をしながら教えてくれた。
「…とまぁ、この様な理由で中々来る事ができませんでした。
全ては某が未熟故の事。赦せとは言いませぬ。」
「何故、文一つ寄越さなかった。」
「右肩をやられておりました故。
代筆も考えましたが、その様な真似をすれば勘の良い政宗殿の事、
気付かれいらぬ心配をさせては、と思い…」
確かにその通りだった。
「報せがないのは無事の証拠」
もし下手に代筆を立てた文など寄越されていたら、
自分の立場を忘れ、何もかもを放り出し甲斐に行っていたかも知れない。
そんな事を全て見越しての幸村なりの気遣いだった。
「Sorry...そう、だよな。お前は間違っちゃいねぇよ。」
「政宗殿…?」
「逢いたかった…」
「はい。逢いとう御座いました。」
部屋の中の影がゆっくりと一つに溶け合うのを
部屋を監視出来る巨木の上から見届けた佐助は大きなため息一つ付いて
「さっさと祝言あげればいいのに。」
と呟き、黒翼一枚残し消え去った。
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幸村がセンス良かったらいいなって話。
暑苦しいのは戦場とお館様の前だけだと思う。
そして私はニョダテを何処まで乙女にしたいのか。
幸村が藤の柄の小袖を贈ったのにはちゃんと理由がありますが、
まぁその辺は読んだ方の感性にお任せ致します(逃げた)
彩桐忍